【映画】モアナと伝説の海:自身の山を知れ【感想】
どうもこんばんは、最近出費予定が嵩みまくっていてくらくらする私です。
先日3月10日に公開されたばかりのディズニー最新作「モアナと伝説の海」を公開日当日に楽しんできたので、今回はその感想をなるべくネタバレなしの方向で語っていこうと思います。
ちなみに県内では吹き替えしか上映がなかったため、吹き替え版についての感想です。
吹き替えもとっても良かったですけれども!字幕版の上映が無いってどういうことなの……。
映画『#モアナと伝説の海』いよいよ本日、3月10日(金)より公開!
— ディズニー公式 (@disneyjp) 2017年3月10日
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「モアナと伝説の海」の監督を務めたのはジョン・マスカーとロン・クレメンツのコンビ。この二人は「アラジン」「リトルマーメイド」などでも監督を務め、ディズニー第二黄金期を支えた名コンビですね!
他にもダイナミックなアクションが楽しい「トレジャー・プラネット」やコミカルな語り口・ゴスペル・デフォルメ強めのキャラデザが特徴的な「ヘラクレス」なども監督しています。
どれも私の大好きな作品なので、この二人が監督を務めるというだけで期待大!
そして実際に見てみるとまさに期待通り。
映像、音楽、アクション、テーマなどどれをとっても一級品で、アツく盛り上がる作品でした!
映像面では透き通る波や水しぶきや満天の星空の美しさ、
地上船上問わず縦横無尽に全身を使って駆け回るキャラクターたちのアクション、舟さばき、海をはじめとする自然が荒れるシーンなんかは大迫力で、これは映画館で観なければもったいない作品だと思います!
またそんなリアルで美しい描写の間に、タラおばあちゃんが伝承を語る時やマウイのミュージカルシーンなど、各シーンで使われる独特の紋様を用いた壁画のような2D的な映像が良いスパイスとなっています。
魔法の息づく神話的な世界観の雰囲気作りを2Dな映像がしっかりしてくれて、少女を主人公に据えた身近な成長の物語でありながら、新しい神話を語られているような壮大さを感じる作品でした。
このあたりは同じく神話をモチーフにしている「ヘラクレス」に通ずる演出かもしれません。
そして音楽も素晴らしい!
まず主題歌の How Far I'll Go ですが、モアナの真っ直ぐで張りのある声が遠くの海を目指して力強く響いていて、心揺さぶられました!
主題歌と言えばアナ雪では Let It Go が大ブレークしましたが。
How Far I'll Go は Let It Go のように強い自己肯定や発散の曲ではありませんが、モアナの自分がしたいことは分かっている、けれど世間はそれを容易には認めてくれない、そして期待に応えたい自分も少しだけいる、という悩みを語っており、これも多くの人が共感する歌詞になっていると思います。
更にこの曲はCMでは故郷の島で最初に歌うバージョンばかりが使われていますが、実は話が進みモアナが悩んだり進んだりする度にアレンジを加えて歌われています。
なのでとても印象に残り、映画を見終わったらこののびやかなメロディを大声で歌いたい!という衝動に駆られること間違いなしです!
他にもマウイの歌う You're Welcome にタマトアの歌う Shiny などキャラクターの個性が弾ける楽しい楽曲や、ポリネシアンの民族音楽的な曲調がわくわくさせてくれる曲が多数演奏されていました。
なんかいつもよりミュージカルシーン多くないか!?とびっくりするほどシーンが音楽で繋がれているのも、神話を語り聴かされているような感覚になる一因かも知れません。
そして途切れない音楽は少しも煩わしいことなどなく、ずっと気分を盛り上げて飽きさせることなく映画を見させてくれました!
シーンを彩るBGMとしての役割と、心情を訴えかけるミュージカルとしての役割を絶妙なバランスで果たしてくれていたと思います。
ストーリーについては、ネットで調べると明確なヴィランズがいない・謎解き要素がない・ロマンス要素がないなどの理由から少々物足りないという意見がいくつか見られますが、私はそうは思いませんでした。
確かに、勧善懲悪の物語ではありません。
謎解きというよりは与えられたクエストを次々に体力で解決していく感じでした。
モアナとマウイの間にロマンス要素はないと、パンフレットでも明言されています。
しかしこの作品では最初から最後まで、あらゆる登場人物の「心の葛藤と克服」がぎっしりと描き込まれていました。
モアナとマウイはもちろん、モアナの父や島民、タラおばあちゃん、巨大蟹のタマトアに、ラスボスに位置づけられるテ・カァ。
鶏のヘイヘイについてはちょっと微妙ですが、彼の成長もちょっとだけ描かれていたような気はします笑
この作品のキーワードは「心」「本当の自分」だと思います。
パンフレットによるとコンセプトは「自身の山を知れ」だそうで、これは自分に至るまでの物事(祖先やルーツ)をよく理解し、アイデンティティの確立を目指せという意味の言葉だそうです。
モアナはじめ登場人物はみんな本当の自分と向き合いきれずにいたり、虚飾で本当の自分を誤魔化したり、あるいは克服したりしています。
「自分の心を見つめ、正直に」というテーマはあっても葛藤を解決する方法はキャラクターごとに千差万別で、そこにはキャラクターどうしの対比も生まれ、一つのテーマに対して多角的に描かれていました。
物語の展開としてはごくシンプルで分かりやすくなっていましたが、シンプルだからこそ大迫力の冒険にわくわくしながらもこの作品にテーマについて考える余裕をもって鑑賞することが出来るのだと思います。
昨今、例えば私が興味のある分野で言うと「性自認」「性的志向」だとか、鬱病、差別、先が見えない不安など、自分がこれからどうしていったら良いのか、自分は何をしたいのか、何をして良いのかが分からず、社会全体が不安を抱えているように思います。
ネットという発信の容易な世界では自分をさらけ出せる一方で、現実の世界では自分を主張したくても出来ない・したら叩かれるというギャップに苦しみながら、自分を最低限使い捨てしないでくれる場所でそこそこに働いて、ただとにかく人並みに普通に生きていける幸せだけは確保したい。
そんな人は少なくないと思います。
「モアナと伝説の海」は「自身の山を知れ」という言葉を伝え、それを実践した人々の神話を描くことで、本当の自分を押し殺すことの苦しみに寄り添いながら、それを克服し幸せになる勇気を分け与えてくれる作品だと、私は思いました。
「素晴らしい真実の愛が訪れる」「信じれば夢は叶う」というこれまでのディズニー作品のテーマとは違い、信じるだけでは自分を救えない世界で、自分自身を大切にすることで活力が生まれ道を切り開けるのだと示してくれるこの作品はとても力強く、響くはずです。
私の大好きな作品のひとつになりました。
まだ観ていない人はぜひ、映画館で、ダイナミックなモアナ神話をたっぷり楽しんでください!